海外の路面電車に興味がある人であれば、カールスルーエの名を知らない人はいないと思います。
ドイツ西南部のバーデン=ヴュルテンベルグ州のこの町では、路面電車と連邦鉄道を直通させ巨大なネットワークをつくりあげました。その立役者というべき直通電車の第一世代車が、今回のお題。
なお、カールスルーエは歴史的経緯で、市内線主体のカールスルーエ交通事業と郊外線主体のアルブタール交通と2つの事業者に別れており、同型車でもバラバラに所属している例が多いので、事業者名は各車両別に記します。
・カールスルーエ交通事業 802 2004年8月 アルブタール線駅(Albtal Bf.) ※
・アルブタール交通 832 2004年8月 フォルバッハ(Forbach)
型式GT8-100C/2SYとよばれるこの電車は、4台車3車体の連節車で、1991年と1995年にデュッセルドルフ車輌製造(DUEWAG:いわゆるデュワグ)で合計36編成が製造されました。
デュワグのシュタットバーン用標準車であるB型
(ケルンのB100C等)の系譜に属し、その亜流として製造されたカールスルーエの郊外線直通用であるGT8-80Cをベースとしています。車体は両側面ドア・両運転台であるため、GT8-80CよりはB型そのものに近い印象となります。
電装はABBが主に担当し、電機子チョッパー制御で、両端の台車に備えた出力280kwの直流直巻電動機を駆動しています。また、電化方式は路面電車は直流750V、連邦鉄道は交流15000V 16.7Hzと大きくことなるため、いわゆる交直流電車となっています。最高速度は100km/hで、特急が200km/hで走る連邦鉄道上でも充分な性能となっています。
さて、これら直通電車は、その経緯上、路面電車「が」連邦鉄道「に」直通とかかれることが通常です。
従いまして、これら直通電車も路面電車という言葉が用いられる故、日本人はともすれば都電、最近なら富山ライトレールあたりの車両を連想することが多いのではないかと思います。
しかし、この電車の諸現を見ると、全幅は2.65m、3車体計の長さ36.57m(連結器を除く)、座席はオールクロスシート(両端車がボックス・中間車が集団見合い)で約100人分というのですから、その大きさやスペックは、名鉄電車など私鉄の中型電車の2両分に匹敵することになります。
・アルブタール交通 836 2004年8月 テュラ通り(Tulla Strasse)※
その上で、こんなふうに2重連で使うことも多い(このとき全長約74m)わけです。
したがって、路面電車が直通するというよりは、むしろ鉄道線の電車が市内線に乗り入れる・・・と考えたほうが適切に思います。
そもそも、新幹線から江ノ電までを「鉄道」として扱い、それ以外に軌道=路面電車があるとする日本の認識とは異なり、ドイツは中小の電車が走る軌道・地下鉄類と高速列車や長距離列車が走る一般鉄道といった感じになっています。従って、福井鉄道や名鉄岐阜各線程度の運行形体の軌道類はドイツにはいくらでもあり、このあたりも日本人が連想する「軌道線と鉄道線の直通」とは大きく異なってきます。
このドイツにおける軌道と鉄道の隔たりは準拠する法律が異なるなど非常に大きく、
それがカールスルーエモデルが革命的と言われる所以です。
※ カールスルーエ市内
・2017.9.24 画像を交換しました。