一般的な知名度は比較的高いものの、鉄道マニアからの注目度はさして高くないと思われるのが、富山県の黒部峡谷鉄道。その理由を考えると、特殊すぎる規格、乗車システム、駅または沿線での撮影が難しい、一方で産業用ナローとしては近代化されすぎ・・・といった点でしょうか。しかし、「産業の為に鉄道がある」という原始的かつ根本的な姿を、非常に生き生きとした状態で感じることができるのは確か。雄大な景色と、一方で、発電所等に吸い込まれてゆく謎めいたレールなど、確実に乗って楽しい路線だと思います・・・とはいえ、私も乗ったのは20年以上前の一度きりなのですが。
・黒部峡谷鉄道 EDS13 1994年9月 宇奈月
さて、黒部峡谷鉄道の車両は幅は1660mm、高さは2420mm(パンタグラフを除く)で、日本国内の一般的な鉄道はおろか、ナローゲージの車両(例・もと近鉄特殊狭軌線で、幅2100mm、高さ3200mm)よりもさらに小さい程です。通常の写真を見ている分にはあまり感じませんが、実際に、ここの機関車を目にすると、機械の塊に車輪がついている・・といった印象を受けます。
その電気機関車は、1966年に製造されたED18以降、4軸の箱型が主力となっています。
それ以前は、専用線時代を含め、2軸機もしくは4軸の凸型機を導入していました。
画像のEDS13は、車歴上は戦後初の新製機である1957年日立製作所製のED13を1993年に改造したものとなっています。が、実態はややこしく、1959年にやはり日立で製造されたED17を1993年に箱型車体に変更した際、流用したのは主電動機程度であったため、残った同車の車体・台車等にED13の主電動機を組み合わせたものとなっています。
主電動機は日立HS102-Grb(端子電圧300V・35kw)×4で、箱型機の42kw×4に比べて、若干出力が小さいものになっています。制御器は半間接式(・・と公式サイト等にはあるものの、一体どういうものなのか)東洋電機製DB2-DC564Aで、運転台は進行報告に対し横向き配置となっています。普段は、宇奈月での入替用なので、これでもよいのでしょう。
なお、黒部峡谷鉄道は列車が完全指定制であることから駅への入場は制限があり、ホームから車両を撮影するのが難しい状況でした。アングルが中途半端なのはそのため・・・おそらくこれは今も変わっていないと思います。
・参考文献
澤内一晃「凸型電気機関車の系譜」 鉄道ピクトリアル859号(2012年2月)電気車研究会