部分廃線前の西鉄宮地岳線の電車から、本日はこの電車を。

・西日本鉄道宮地岳線 モ326 1997年3月 貝塚
300形は以前、
303形・308形の前面非貫通車を取りあげたことがありますが、今回のお題はスタンディウィンドウの中間車、320形です。
この車両については、まず1951年近畿車両製の大牟田線初代600形を説明しなくてはなりません。国鉄52形電車なみの流線形を持つ2扉車で、編成がMc-M-Tcの3連2本がありました。しかし1961年に編成を解除され、中間M車はロングシート化の上で300形と編成を組むことになりました。これが320形のモ324・325です。一方、先頭車はMcを電装解除の上で新造の中間電動車2両と編成を組んで1300形4連2本となります。このときに発生した台車・電装品等を流用して1961年に川崎車両で製造されたのが、このモ326・327です。従って、320形は機器は同一ですが車体が全く異なる2つのタイプが存在しました。
なお、326・327の窓配置は京王2700、小田急2200等の新関東型と同じですが、車体長はそれらよりも若干長めの18000mm(最大長18500mm)、車体幅は最大2740mmです。
その後、300形は改軌の上で2回にわけて宮地岳線に順次転属しますが、2扉の324・325は対象から外れ大牟田線で終焉を迎えます。同じく元600形の1300形は3扉化・冷房改造共に不可能ということで廃車になっているので、これは仕方がなかったのでしょう。
一方326、327は1986年6月で宮地岳線に転入。国鉄DT14・TR47と同系の新扶桑FS-8台車に三菱の主電動機MB-249-AFR(出力82kw×4)から、釣合梁式の国鉄TR22台車に国鉄MT15-Cになります。なおMT-15は国鉄でのスペックは端子電圧675V・出力100kwですが、西鉄では104kwにしていたようです。理由は不明。主制御器は三菱ABFのまま変わっていません。
転入した年の10月にはワンマン化、そして1989年には冷房化改造(8500kcal/hの冷房機を3台搭載)が行われています。300形はいくら車体更新したとはいえ運輸省規格型を冷改したあたりに、非常に唖然としたのを思い出しますが、その中でこの2両は全金属製の車体を持つので違和感がありませんでし・・・今見ると、スタンディーウィンドウと冷房機の組み合わせは若干アンバランスな感もしますが。

・西日本鉄道宮地岳線 モ327 1998年9月 香椎花園
さらに1993年にはモ327は西武701系の廃車発生品を使って、台車はFS-342(国鉄DT21)、主電動機はHS-836Frb(国鉄MT54)、制御器は日立HT-20Aに変更。津屋崎側先頭車のモ307と2両ユニットの電動車構成となりました。ただし、ブレーキは終始自動ブレーキのAMAでした。
・参考文献
出口 正則・諸岡 雅宏「私鉄車両めぐり162 西日本鉄道」 鉄道ピクトリアル688号(1999年4月増)
慶応義塾大学鉄道研究会『私鉄電車のアルバム 1』 交友社 1980年