上信電鉄は2017年にJR東日本から107系100番台2次車のうち6編成12両を譲り受け、そのうち1編成が先月10日より700形(クモハ701+クハ751)として営業運転を開始しました。同社は、昭和30年代より車両の鋼体化、新製、さらには車両の譲渡を西武鉄道に頼ってきたことを考えると、これは大きな転換といえるでしょう。その背景には、西武で廃車になる車両が20m級4扉車で界磁チョッパでは上信には合わなくなってきたことが考えられます。一方で、107系は20m級3扉ロングシートの車体で、従来の電車に同じというのは購入の動機になったと思います。
上信電鉄 クハ751+クモハ701 2019年3月 山名~西山名
全長20000mm・車体幅2800mmの国鉄規格の車体は、地方私鉄には物理的に入線不可という事例も多いですが、既にそれに準じる規格の電車を使用する上信にとっては何の問題もありませんでした。ただし、クモハの自重は従来の車両よりも重めの42.1tとなっています※・・・上信には過去自重45tを超える国鉄80系電車の入線実績がありますが。
一方で、オーソドックスな抵抗制御は、ローカル私鉄にとっては保守の面で望ましいものでしょう。部品の供給という点でも国鉄型が残る限りはそう大きな心配はしなくてもいいのかもしれません。主電動機のMT54も、もと西武401・701・801系の151形で日立HS-836*rbとして使用実績があります。
ただし大きく異なるのは機器構成。上信のこれまでの中空軸並行カルダン駆動の電車は、端子電圧や出力などの差はあれど、全車両が直並列制御でした。しかし、700形は国鉄~JRの抵抗制御の1M車らしい永久直列制御となっています。このあたり運転時の感覚は異なる面もあろうかと思います。
車体はほぼそのまま。上信らしい斜め塗りになるかと思いきや、ずいぶんと大人しいアイボリーと緑色の単純な2色塗りとなりました。車内は座席・床材の交換等は行われましたが、クハのトイレは汚物タンク等を取り外して閉鎖しただけとなっています。
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700形デビュー記念乗車券セットに記載の諸元表に基づく。