今月初旬、26年ぶりに黒部峡谷鉄道に行ってきました。富山県には何度となく行っているのですが、県都富山市からそれなりの距離があり、さらに撮影可能な場所が限られる・乗れば往復3時間30分コースと、なかなか足が向きませんでした。今回の富山行は、富山駅の路面電車南北接続を見るのが第一目的でしたが、紅葉シーズンですし、たまには地鉄以外に行ってみるのもいいか・・・と思いたった次第です。
さて、黒部峡谷鉄道は全ての交換駅で列車交換する21分ヘッドダイヤが基準ですが、最も旅客列車が多いときでも時刻表上はあちこちが抜けています。ここには、黒部峡谷鉄道敷設の本来の目的である、関西電力の専用列車が設定されていることが多いです。この専用列車、それも混合列車を撮影することできたので、今回とりあげる次第です。
なお、撮影した場所は黒部峡谷鉄道で数少ない撮影ポイントである宇奈月~柳橋(やまびこ歩道橋から宇奈月ダムに行く途中)です。

牽引するのは、黒部峡谷鉄道の顔と言ってもいい箱型電気機関車。このEDM31は1990年日立製作所製の比較的新しい方の車両です。ED「M」のMは、通常のED型とはギア比が異なる(EDM:4.11、ED:5.57)ことなどを示しており、定格牽引力が3650kgから2770kgに減少した代わりに、定格速度が13.7km/hから18.1km/h ※に向上しています。なお、EDMの大半はEDからの改造車ですが、この31号機は32号機とともに新製時からEDMです。主電動機出力は35.0kW×4・・・黒部峡谷鉄道の車内放送では235馬力で力持ち・・・と言ってますが、そんなことはありません(笑・・・車両の性能で大切なのは、運用に適した性能を発揮できることですね)

機関車の次に連結されていたのは、密閉式客車(A型)のボハ2100。かつて黒部峡谷の列車といえば開放式(一般車)と密閉式(特別車)の2種で構成されたものが多くありましたが、密閉式はリラックス車などに置き換えられた結果、現在は1編成7両しか一般旅客用には残っていません。このボハ2100は関西電力専用車として1987年にボハ2033を改造したもの。扉が引戸から折戸になり、車内は転換クロスシートになっています。

続いてコンテナを積んだ無蓋車が3両。ト224、ト218、ト208です。コンテナは沿線で発生したゴミの運搬用で「峡谷美人」と名付けられています。なお、黒部峡谷は貨車だけで150両近くを保有しています。


そのうしろは、2軸客車が2両。まずは密閉式のK型ハ54で、関電専用車のみに存在する型式です。製造年は比較的新しく1974年 アルナ工機製。なにか遊園地の豆汽車のような雰囲気です。
そして開放型のC型ハフ31。これが実に1926年加藤車輛製というシロモノで、黒部峡谷にはこういった隠れた長寿車両が他にも存在しています。最も車体は木製から鋼製に作り替えられています。そういえば、車掌さんは社章弁等が付いているハフに載るのですが、この時期に開放型での乗務(特に夜)はなかなか辛そうに感じました。
しんがりは、普通の無蓋車・・・だったのですが、これはどういうわけかシャッターが切れず、撮り逃しています。
鉄道誌に取り上げられることも少ない黒部峡谷鉄道ですが、路線・列車ともになかなか楽しい路線だと感じました。
・参考文献
「私鉄フォーラムスペシャル・黒部峡谷鉄道」楠居利彦・高松大典 鉄道ダイヤ情報101号(1992年9月)
本文中に記載の型式・諸元・製造年等はこの文献に従った。
※
黒部峡谷鉄道の公式サイトでは24.8km/hになっている。